PROPERTY / 収益物件

アパート1棟の遺産は、家賃で価値が決まる

親が遺した賃貸アパート、投資用の区分マンション、貸店舗や事務所。収益を生む不動産の価値は、自宅とは別の物差し──収益性──で測られます。誰が引き継ぎ、他の相続人にいくら支払うのか。その計算の土台になる時価の考え方を解説します。

賃貸アパート

このページの結論

  • 収益物件の評価の中心は収益還元法(家賃収入から費用を引いた純収益を利回りで割り戻して価格を求める方法)です。
  • 満室想定か現実の稼働か、修繕費をどう見るかで評価額は大きく動きます。経営を引き継ぐ側と代償金を受け取る側で、前提の置き方が争点になります。
  • レントロール(各室の賃料・契約状況の一覧表)等の資料が揃えば、入居者に知られることなく評価できます。
  • 事業用不動産で会社経営が絡む場合は、税理士・弁護士との連携を含めた整理が必要です。
吉田 健人

執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号

収益還元法──家賃から価格を導く

自宅の評価が「似た物件がいくらで売れたか」を軸にするのに対し、収益物件の評価は「この物件がいくら稼ぐか」を軸にします。基本の式は次のとおりです。

収益価格 = 純収益(年間家賃収入 − 費用)÷ 還元利回り

シンプルな式ですが、それぞれの変数に判断が入ります。家賃収入は満室想定ではなく空室・滞納リスクを織り込んだ水準か。費用に管理費・修繕費・固定資産税・将来の大規模修繕がどう見込まれているか。利回りは物件の立地・築年・用途に対して妥当な水準か。

たとえば、年間家賃収入1,200万円のアパートについて、一方が「満室・費用最小」の前提で純収益1,000万円・利回り5%として2億円と主張し、他方が「空室多め・修繕費多め」の前提で純収益700万円・利回り7%として1億円と主張する──前提の置き方だけで、同じ物件の評価が2倍開くことがあり得ます(説明のための仮の数値です)。鑑定評価は、市場データに基づいて各変数の妥当な水準を示し、この開きを検証可能にします。

経営を引き継ぐ相続人と、代償金を受け取る相続人

賃貸経営を手伝ってきた相続人がアパートを取得し、他の相続人には代償分割(不動産を取得する相続人が、他の相続人に金銭を支払って清算する分割方法)で代償金を支払う──収益物件の遺産分割でよくある形です。このとき、代償金の額はアパートの評価額から直接計算されるため、評価額の開きがそのまま代償金の開きになります。

取得する側には評価を低く、受け取る側には高く見たい動機が働きます。相続税評価額(貸家建付地等の減額を織り込んだ課税上の価格)は市場の時価より低くなるのが通常で、これをそのまま使うと取得する側が有利になり得ます。逆に、購入時の価格や満室想定の簡易計算を根拠に過大な代償金が主張されることもあります。どちらの立場でも、根拠を書面で検証できる評価が話し合いの土台になります。代償金の計算の仕組みは代償分割の代償金の決め方で詳しく解説しています。

資料を示しながら説明する様子

物件の種類(アパート1棟・区分・店舗等)、おおよその賃料収入、レントロール等の資料の有無をうかがえれば、評価の設計と費用の見当をお伝えします。収益物件の鑑定評価書は35万円〜60万円(税別)が目安です。

収益物件の評価を相談する

初回相談無料/ご相談内容を他の相続人に伝えることはありません

よくあるご質問

アパート経営を引き継ぐ兄から提示された金額が妥当か分かりません。

経営を引き継ぐ側は低い評価を、代償金を受け取る側は高い評価を主張しやすいのが収益物件です。提示額の前提(賃料水準・空室の見方・利回り)に不合理な点がないかを検証するセカンドオピニオンも承っています。根拠資料ごとお持ち込みください。

どんな資料を用意すればよいですか。

登記事項証明書・固定資産税納税通知書のほか、レントロール(各室の賃料・契約状況の一覧表)、賃貸借契約書、直近数年の収支が分かる資料(確定申告の不動産所得の内訳等)、修繕履歴があると評価の精度が上がります。揃っていない資料があってもご相談いただけます。

満室想定の利回り計算で高い金額を主張されています。

満室想定は現実の空室・滞納リスクを無視した計算です。鑑定評価では、現実の稼働状況と市場の標準的な空室率を踏まえた純収益で評価します。逆に、実際より悪い稼働を前提に低く主張されるケースもあり、どちらの方向でも前提の検証が有効です。

入居者に相続のことを知られたくありません。

収益物件の調査は外観・共用部と資料の確認が中心で、入居者への聞き取りは行いません。賃貸借契約書とレントロールをご提供いただければ、入居者に接触せずに評価できます。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。

電話で相談無料相談を申込む