PROPERTY / 分譲マンション
相続税評価額と時価の差が、一番出やすい資産
分譲マンションは取引事例が多く「評価しやすい」と思われがちです。しかし相続の場面では、申告に使った相続税評価額と実際の時価の開きが大きく、「どちらの金額で分けるか」がそのまま争点になります。

このページの結論
- 相続税評価額(路線価ベース)と時価の乖離は、マンション、特に高層階で大きく出やすくなります。どちらで分けるかで相続人ごとの損得が変わります。
- 同じマンション内でも、階数・向き・角部屋・リフォーム履歴で価格は動きます。隣の部屋の成約価格をそのまま使うことはできません。
- 賃借人が入居中の区分は、空室の場合より低い水準で評価するのが通常です。
- 管理費・修繕積立金の滞納は取得者が引き継ぐ負担として、評価とあわせて整理が必要です。

執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal|不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号
相続税評価額で分けると、誰が得をするのか
マンションの相続で最初に目にする金額は、多くの場合、相続税申告のための相続税評価額です。土地部分は路線価(相続税・贈与税の計算のために国税庁が定める道路ごとの価格)ベース、建物部分は固定資産税評価額ベースで計算され、市場で売買される時価より低くなるのが一般的です。
この乖離(かい離=2つの価格の開き)は、マンションで特に大きく出やすいことが知られています。相続税評価では専有面積が同じなら低層階も高層階もほぼ同じ評価になりやすい一方、市場では階数・眺望によって価格差がつくためです。タワーマンションの高層階では、時価が相続税評価額の数倍になる例も指摘されており、2024年からは課税側でもマンションの評価方法が見直されたほどです。
遺産分割協議で「申告に使った金額でいいよね」と提案されたとき、その金額で分けるとマンションを取得する相続人が有利に、代償金や他の財産を受け取る相続人が不利になり得ます。差を理解したうえでの合意なら構いませんが、金額の大きい住戸ほど、時価を確認してから判断することをお勧めします。仕組みの詳細は路線価と時価の違いで解説しています。
同じマンションでも、部屋ごとに価格は違う
時価を把握する際も、「同じマンションの成約事例=うちの部屋の価格」ではありません。次の要因で、同一マンション内でも価格は動きます。
- 階数:一般に高層階ほど高く評価されます。眺望や日照が変わるためです。
- 向き・採光:南向きと北向き、前面に建物があるかどうかで評価は変わります。
- 角部屋か中住戸か:開口部の多い角部屋にはプレミアムがつくのが一般的です。
- リフォーム履歴:親が生前に水回りを更新していたか、原状のままかは価格に反映されます。
- 取引の事情:売り急ぎなど、当事者の事情で成約価格が市場水準からずれていることがあります。
鑑定評価では、こうした要因を取引事例と対象住戸の間で比較し、補正の過程を鑑定評価書に明記します。「なぜこの金額なのか」を他の相続人や調停委員が検証できることが、無料査定書との大きな違いです。両者の使い分けは査定と鑑定の違いをご覧ください。

マンション名と部屋番号(またはおおよその階数・間取り)、賃貸中かどうかをうかがえれば、評価の難易度と費用の見当をお伝えできます。分譲マンション1室の鑑定評価書は25万円〜35万円(税別)が目安です。
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よくあるご質問
相続税の申告書に書かれた評価額で分けようと言われています。
相続税評価額は課税のための価格であり、市場で売買される時価とは別のものです。マンション、特に高層階の住戸は両者の差が大きく出やすい類型で、相続税評価額で分けると住戸を取得する相続人が有利になることがあります。全員が差を理解したうえで合意しているなら問題ありませんが、納得できない場合は時価を確認する価値があります。
同じマンションで最近売れた部屋があります。その価格でよいですか。
有力な手がかりですが、そのままは使えません。階数・向き・角部屋か中住戸か・リフォームの有無・売り急ぎ事情の有無によって、同じマンション内でも価格は動きます。成約事例を出発点に、対象住戸との違いを補正して評価するのが鑑定の作業です。
亡くなった親が貸していた部屋です。評価はどうなりますか。
賃借人が入居中の区分は、自分で使えない分、空室の状態より低い水準で取引されるのが通常です。賃料水準や契約内容も価格に影響するため、賃貸借契約書をご用意いただいたうえで、収益性も考慮して評価します。空室前提の査定額をそのまま使うと過大評価になり得ます。
調べたら管理費の滞納がありました。評価に影響しますか。
管理費・修繕積立金の滞納は、区分所有者が変わっても新しい所有者が支払義務を引き継ぐとされており、実質的に物件の負担として扱われます。遺産分割の場面では、評価額とは別に滞納額を整理して清算方法を決めておくことをお勧めします。承継の法律関係の詳細は弁護士にご確認ください。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません
物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。