CASE 01
調停委員から次回期日までに価格資料を求められた
状況
調停2回目で実家の評価が争点に。他の相続人は相続税申告の路線価ベースの金額を主張している。調停委員から「次回までに価格のわかる資料を」と言われたが、次回期日は6週間後。
評価資料を用意した場合
資料収集と並行して評価を進めれば、鑑定評価書の作成期間として対応しやすい時間です。期日1週間前の納品を目標に逆算したスケジュールを組み、路線価と時価の性質の違いも含めて説明できる資料を用意します。
SITUATION / 遺産分割調停・審判
遺産分割調停で不動産が争点になると、調停委員から価格資料の提出を求められます。何を出すかによって、その後の議論の進み方が変わります。無料の査定書で足りる場合と、鑑定評価書が必要な場合の見極めを解説します。


執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal|不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号
遺産分割協議がまとまらない場合、相続人は家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停は、裁判官と調停委員(民間から選ばれる非常勤の委員)で構成される調停委員会を介した話し合いの手続です。相続人が直接向き合って言い合うのではなく、交互に調停室に入り、調停委員を介して主張を伝え合う形で進みます。
調停で合意に至れば調停成立となり、合意内容が調書に記載されます。合意に至らず調停が不成立になると、遺産分割の場合は自動的に審判手続に移行し、最終的には裁判官が遺産の分け方を決めることになります。
不動産の価格が争点になっている場合、調停委員がまず知りたいのは「客観的にはいくらぐらいのものなのか」です。ここで相続人双方が異なる資料を出し合うと、調停委員としてもどちらの数字を軸に話を進めるべきか判断がつきません。根拠が明示された第三者の評価がひとつ入ると、議論の軸ができます。反論する側は、評価書のどの前提・どの事例選択に異論があるのかを特定する必要が生じ、議論が具体化します。
| 資料 | 費用 | 作成期間 | 調停での位置づけ |
|---|---|---|---|
| 固定資産税評価証明書 | 数百円 | 即日 | 課税上の価格。時価と乖離があり、争いがある場面では不十分 |
| 仲介会社の査定書 | 無料 | 数日 | 参考資料。作成者が価格に責任を負わず、偏りの指摘を受けやすい |
| 価格等調査報告書 | 10万円〜 | 約1週間 | 鑑定士作成の調査資料。協議の土台には機能するが、提出資料としては鑑定評価書に劣る |
| 鑑定評価書 | 20万円〜 | 2〜3週間 | 鑑定士が責任を負う正式書面。説明力が最も高い |
※ 期間は資料が揃ってからの目安です。調停での評価は個別の事案・調停委員の判断によります。
無料の査定書は、相続人全員が金額に納得している場面では十分に役割を果たします。一方で、売却の可能性を前提に仲介会社が作成する営業上の参考価格であり、作成者が価格の根拠に責任を負う書面ではありません。金額に争いがある調停の場では、その点を突かれると資料としての力を失いやすいのが実情です。
期日1か月前
ご相談・お見積り
物件と調停の進行状況の確認
3週間前
ご契約・資料提出
登記・納税通知書など
2週間前
調査・評価
現地調査と事例分析
1週間前
納品
内容のご説明・提出準備
※ 資料の揃い具合により前後します。期日が迫っている場合もまずはご相談ください。

調停の進行状況と次回期日をうかがえれば、間に合う資料と段取りをご提案します。代理人弁護士の先生がいらっしゃる場合は、先生を交えたお打ち合わせも可能です。
期日までの段取りを相談する初回相談無料/ご相談内容を他の相続人に伝えることはありません
他の相続人から査定書が提出された場合、選択肢は3つあります。
いきなり③に進むのではなく、②を挟むことをおすすめしています。検証の結果、相手の数字が妥当なら、鑑定費用をかけずに済むからです。たとえば実家を取得して代償金を支払う側の相続人が低めの査定書を出す、代償金を受け取る側が高めの査定書を出す──立場によって数字が偏る構図は、遺産分割の調停で珍しくありません。
調停が不成立となり審判に移行した場合、不動産の評価に争いが残っていると、裁判所が鑑定人(裁判所の命令で鑑定を行う不動産鑑定士)を選任して鑑定を実施することがあります。当事者が依頼する私的鑑定(当事者が自ら不動産鑑定士に依頼する鑑定)とは、次の点が異なります。
| 私的鑑定(当事者依頼) | 裁判所の鑑定(鑑定人選任) | |
|---|---|---|
| 依頼者 | 相続人の一方(または共同) | 裁判所が鑑定人を選任 |
| 費用の目安 | 20万円〜60万円程度(税別) | 予納金は数十万円規模になることが多いとされる |
| 費用負担 | 依頼した相続人(共同依頼なら分担) | 申立当事者がいったん予納し、最終的な負担は審判等の内容で定まるのが一般的な扱い |
| 位置づけ | 当事者の提出資料 | 裁判所の証拠調べとしての鑑定 |
| 中立性の見られ方 | 依頼者側の資料として吟味される | 中立の鑑定として重く扱われる傾向 |
| 時期の自由度 | いつでも依頼可能 | 裁判所の判断・手続の進行による |
※ 一般的な傾向の整理です。個別の事件での扱いは裁判所の判断によります。
裁判所の鑑定が実施される場合でも、私的鑑定が無駄になるわけではありません。調停段階の合意形成の材料になるほか、裁判所の鑑定の結果を検証し、前提や手法について質問すべき点を整理する土台にもなります。
CASE
※ 実際のご相談内容ではなく、起こりうる状況として作成したシナリオです。実在の人物・案件とは関係ありません。
CASE 01
状況
調停2回目で実家の評価が争点に。他の相続人は相続税申告の路線価ベースの金額を主張している。調停委員から「次回までに価格のわかる資料を」と言われたが、次回期日は6週間後。
評価資料を用意した場合
資料収集と並行して評価を進めれば、鑑定評価書の作成期間として対応しやすい時間です。期日1週間前の納品を目標に逆算したスケジュールを組み、路線価と時価の性質の違いも含めて説明できる資料を用意します。
CASE 02
状況
実家を取得して代償金を支払う側の相続人が、周辺の売出事例より明らかに低い査定書を調停に提出してきた。感覚的にはおかしいが、どこがおかしいのか説明できない。
評価資料を用意した場合
セカンドオピニオンで査定書の採用事例・補正の妥当性を検証し、問題点を書面で整理します。そのうえで必要なら、当方の鑑定評価書を対抗資料として提出する流れに進めます。
決まった様式はなく、査定書・固定資産税評価証明書・鑑定評価書などが実務では提出されています。相続人間で金額に争いがない場合は簡便な資料でも進みますが、争いがある場合は、根拠を第三者が検証できる鑑定評価書が最も機能します。代理人弁護士の先生がいる場合は、何を出すかはその方針に従ってください。
調停は当事者の合意で成立する手続であり、鑑定評価書が調停委員や裁判所の判断を拘束することはありません。ただ、根拠の示された第三者の評価は、調停委員が相続人双方を説得する際の材料として機能し得ます。「間違いなく通る」とは申し上げられませんが、無根拠の主張よりも議論の位置は明確になります。
審判で常に裁判所の鑑定が実施されるわけではなく、実施されれば予納金の負担も生じます。当事者が依頼した鑑定評価書は、調停段階の合意形成の材料になるほか、審判に移行した場合も資料として提出できます。裁判所の鑑定が行われた場合に、その内容を検証する専門家が自分の側にいるという意味もあります。手続の見通しは弁護士の先生にご相談ください。
資料の揃い具合によりますが、鑑定評価書は資料が揃ってから2〜3週間程度が目安のため、かなりタイトです。まずお電話でご相談ください。間に合わない場合は、期日には概要の資料を提出し、次々回期日に鑑定評価書を出すといった段取りも考えられます。段取りは代理人弁護士の先生とご相談ください。

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。