TOPIC / 代償金

実家を相続するなら、いくら支払うのか

実家に住み続けたい。思い出のある家を売りたくない。売却しない遺産分割では、実家を取得する相続人が他の相続人に「代償金」を支払います。その金額は、実家の評価額で決まります。

相続した実家

このページの結論

  • 代償分割(一人が不動産を取得し、他の相続人に金銭を支払う分割方法)では、代償金の出発点は「取得する不動産の時価 − 自分の相続分」です。
  • 実家の評価が数百万円動けば、代償金もその分だけ動きます。評価額こそが代償金の実質的な争点です。
  • 売却しないため市場の成約価格が観測できず、評価の対立が最も起きやすい場面です。
  • 支払う側は低い評価を、受け取る側は高い評価を主張しがちです。第三者の評価で議論の土台をそろえることができます。
吉田 健人

執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号

代償金の基本の計算

代償金とは、不動産のような分けられない財産を相続人の一人が取得する代わりに、他の相続人へ支払う清算金のことです。この分け方を代償分割と呼びます。実家を取得する相続人は、自分の相続分を超えて受け取る部分を、金銭で他の相続人に支払うのが基本の形です。

具体例で考えます。遺産が実家3,600万円と預貯金1,200万円(合計4,800万円)、相続人が兄と弟の2人で、法定相続分どおり2分の1ずつ分けるケースです。各自の取り分は2,400万円ずつになります。

兄が実家(3,600万円)を取得すると、自分の取り分2,400万円を1,200万円超えてしまいます。一方の弟は、預貯金1,200万円を全部受け取っても取り分に1,200万円足りません。そこで兄が弟に代償金1,200万円を支払って清算する──これが代償分割です。

代償金の計算フロー(実家3,600万円・預貯金1,200万円・兄弟2人の例)

兄が取得する実家の時価

3,600万円

鑑定評価で確定

兄の相続分(遺産4,800万円×1/2)

2,400万円

評価額しだいで変わる

兄が弟に支払う代償金

1,200万円

弟=預貯金1,200万円+代償金1,200万円

※ 説明のための仮の数値です。相続人の構成や分け方の合意内容によって計算は変わります。

この計算で預貯金の額は通帳や残高証明書で確定します。動くのは実家の評価額だけです。つまり、代償金の争いの正体は、ほとんどの場合、評価額の争いです。

評価額が動くと、代償金はいくら動くのか

同じ実家でも、だれがどんな資料で評価するかによって金額は変わります。先ほどの例で、実家の評価額だけを動かしてみます。

預貯金1,200万円・兄弟2人。実家の評価額によって代償金がどう動くか
実家の評価額遺産総額一人あたりの相続分兄が支払う代償金
3,200万円4,400万円2,200万円1,000万円
3,600万円4,800万円2,400万円1,200万円
4,000万円5,200万円2,600万円1,400万円

※ 説明のための仮の数値です。法定相続分どおり等分する前提の簡略計算です。

評価額が3,200万円か4,000万円かで、代償金は400万円変わります。評価額の差の半分が、そのまま支払額・受取額の差になる──この構造があるからこそ、実家を取得する側は低い査定書を、代償金を受け取る側は高い査定書を持ち寄ることになり、話し合いが膠着します。

資料を示しながら説明する様子

いま提示されている代償金の前提となっている評価額が妥当かどうか、資料を拝見して見当をお伝えできます。実家を取得する側・代償金を受け取る側どちらのご相談もお受けします。

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話し合いを前に進めるための順序

代償金の協議がこじれているとき、整理すべき順序は次のとおりです。

  • ① 遺産の範囲と預貯金の額を確定する:預貯金や有価証券は残高証明書等で確定します。ここに争いの余地はほとんどありません。
  • ② 不動産の時価を確定する:本ページの主題です。相続人全員が納得できる評価を用意します。話し合いの段階なら価格等調査報告書、調停・審判に出すなら鑑定評価書が適しています。
  • ③ 分け方と割合を整理する:法定相続分どおりにするのか、寄与分(被相続人の財産の維持・増加への貢献)や特別受益(生前贈与など)を考慮するのか。法律上の論点は弁護士にご相談ください。
  • ④ 支払い方法を設計する:一括か分割か。支払いの見込みが立たない場合は、換価分割(売却して代金を分ける方法)との比較も検討します。

②が固まらないまま③④を議論しても、土台が揺らいでいるため合意に至りません。逆に②さえ固まれば、残りは計算と設計の問題になります。

よくあるご質問

代償金は法定相続分どおりに計算しないといけないのですか。

遺産分割協議は相続人全員の合意があれば、法定相続分と異なる分け方もできます。一方、調停・審判に進むと法定相続分が基準になるのが一般的です。分け方や割合の主張は法律上の論点なので弁護士にご相談ください。どの割合を採るにせよ、掛け算のもとになる評価額が動けば代償金も動きます。

代償金を一括で支払えない場合はどうなりますか。

分割払いの合意や、取得する財産の組み合わせの調整で対応する例があります。そもそも支払える見込みがないと代償分割は成立しにくいため、換価分割(売却して代金を分ける方法)との比較検討も必要です。支払い方法の設計は法律実務の範囲なので、弁護士にご相談ください。

相続税申告で使った路線価の評価額で代償金を計算してよいですか。

相続人全員が納得しているなら、その金額で合意すること自体は可能です。ただし路線価は課税のための価格で、時価の8割を目安に設定されています。路線価ベースで計算すると、実家を取得する相続人が実質的に得をする方向に働きやすく、後から不満が出る原因になります。詳しくは「路線価と時価」のページをご覧ください。

代償金の話し合いがまとまりません。どうすればよいですか。

金額の対立の原因が評価額の食い違いにあるなら、第三者による評価で議論の土台をそろえるのが有効です。それでもまとまらない場合は遺産分割調停に進むことになります。当方の鑑定評価書は調停に提出する資料としてもご利用いただけます。なお、鑑定評価書は裁判所の判断を拘束するものではありません。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。

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