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弁護士の先生が遺留分事件で鑑定評価を使う場面──基準時は相続開始時という特殊性

遺留分侵害額請求では、財産評価の基準時が相続開始時となるため、過去時点の評価という鑑定固有の技術が活きます。弁護士の先生が鑑定評価を使う典型場面と依頼時のポイントを整理しました。

著者:吉田 健人·読了 約4
弁護士の先生が遺留分事件で鑑定評価を使う場面──基準時は相続開始時という特殊性

遺留分(一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分)をめぐる事件は、不動産の評価が結論を直接左右する類型です。2019年7月施行の民法改正により、遺留分の権利は目的物の共有持分を取得する形から、金銭の支払いを請求する権利(遺留分侵害額請求)に一本化されました。請求額そのものが財産の評価額から計算されるため、不動産の評価は事件の中核的な争点になります。弁護士の先生が鑑定評価を活用する場面を整理します。

遺留分の基準時は「相続開始時」

遺産分割の実務では分割時(現在)の時価が基準とされるのに対し、遺留分算定の基礎となる財産は相続開始時の価格で評価するのが原則です。相続開始から交渉・訴訟まで時間が経っている事案では、「今の価格」ではなく「亡くなった日の価格」が必要になります。

ここで、過去の一時点を価格時点とする評価——当時の取引事例や市場資料に基づいて当時の価格を判定する作業——は、不動産鑑定評価基準が正面から認める鑑定固有の技術です。地価が動いた地域では、現在価格との差がそのまま請求額の差になります。

生前贈与された不動産の評価

遺留分算定では、一定の生前贈与も基礎財産に加算されます。贈与された不動産についても評価が必要になりますが、贈与から年月が経ち、受贈者が建物を建て替えているケースなどでは、評価の前提の整理が必要です。どの範囲の贈与を加算するか、条件変更をどう扱うかは法律上の主張構成に関わるため、先生の方針をうかがいながら評価の設計を行います。

相手方の評価資料への対抗・検証

想定されるケースとして、相手方が仲介会社の査定書や私的鑑定を根拠に低い(あるいは高い)評価額を主張してくる場面があります。選択肢は二つです。対抗する鑑定評価書を出すか、まず相手方資料の問題点を検証する意見書にとどめるか。事案の金額規模と交渉段階によって費用対効果が変わりますので、どちらが適切かを含めてご提案します。

交渉段階では価格等調査報告書で目線を作り、訴訟に進む場合に正式な鑑定評価書へ切り替えるという段階的な使い方も可能です。

ご依頼時にお知らせいただきたいこと

過去時点の評価では、相続開始日(価格時点の確定)、当時の建物・利用状況がわかる資料の有無、次回期日までの残り時間が設計の前提になります。鑑定評価書は資料が揃ってから2〜3週間が標準ですので、期日から逆算して早めにご相談いただけると選択肢が広がります。

まとめ

  • 遺留分は金銭債権化されており、評価額がそのまま請求額を左右する
  • 基準時は相続開始時が原則で、過去時点の評価という鑑定固有の技術が活きる
  • 対抗評価か検証意見書か、正式鑑定か価格等調査報告書か、事案に応じた使い分けができる

「この事案、鑑定を入れる実益はあるか」という一往復からのご相談を歓迎します。お問い合わせからご連絡ください。遺留分の基礎は遺留分と不動産評価でも解説しています。

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

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