財産目録の作り方──不動産は「どう書くか」で後の話し合いが変わる
遺産分割協議の出発点になる財産目録。不動産は登記事項証明書のとおりに特定し、評価額欄に何を書くかが悩みどころです。書き方の基本と、評価額欄の数字が後の協議に与える影響を不動産鑑定士が解説します。

遺産分割の話し合いは、「遺産に何があるか」を一覧にした財産目録(相続財産の種類・内容・評価額をまとめた一覧表)を作るところから始まります。預金や株式は残高や時価がそのまま書けますが、悩ましいのが不動産です。どう特定し、評価額の欄に何を書くか。書き方の基本を整理します。
不動産の特定は登記事項証明書のとおりに
不動産は住所(住居表示)ではなく、登記記録上の表示で特定するのが基本です。登記事項証明書(法務局が発行する登記記録の証明書。誰でも取得できます)の「表題部」を見て、土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら所在・家屋番号・種類・構造・床面積をそのまま書き写します。
住居表示と地番は一致しないことが多く、また実家の敷地が複数の地番に分かれていたり、前面の私道持分を持っていたりすることもあります。固定資産税の納税通知書や名寄帳(市区町村が作成する所有不動産の一覧)で漏れがないか確認しておくと安心です。権利部の記載から、抵当権などの担保の有無も分かります。
評価額の欄に何を書くか
実務でよく使われるのは固定資産税評価額です。納税通知書で手軽に確認でき、目録の暫定値としては十分機能します。
ただし、固定資産税評価額は公示価格水準の7割程度に設定された課税用の数字で、時価ではありません。遺産分割で実際に分ける場面では時価が基準になるため、暫定値のまま代償金の計算に進むと、数百万円単位のずれが生じることがあります。1つの不動産に複数の価格が併存する仕組みは不動産の4つの価格で解説しています。
目録の段階では「固定資産税評価額○円(暫定)」と明記しておき、分割方法の検討が具体化した段階で時価を把握する——という二段構えをおすすめします。
目録の精度が協議の速度を決める
財産目録は、相続人全員が同じ情報を共有するための土台です。不動産の記載が曖昧だったり、評価額の性質(課税用の数字か、時価か)が共有されていなかったりすると、協議の途中で「その数字はおかしい」と話が戻ってしまいます。逆に、特定が正確で、評価額の根拠が明示された目録は、話し合いを前に進める推進力になります。
なお、調停や審判に進んだ場合も財産目録は基礎資料になります。相続税申告のための評価は税理士に、目録を踏まえた協議書の作成や法的な整理は弁護士にご相談ください。
まとめ
- 不動産は登記事項証明書の表題部のとおりに特定する。私道持分や複数地番の漏れに注意
- 評価額欄は固定資産税評価額を暫定値として使いつつ、時価とは別物であることを明記する
- 分割方法の検討が具体化したら、時価の把握に切り替える
「目録に書く時価をどう把握すればよいか」という段階のご相談も承ります。お問い合わせからお気軽にどうぞ。
免責事項
本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。
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