共有持分だけを売ることはできるのか──持分売却の現実と「共有減価」

相続で実家が共有になり、自分の持分だけでも売りたい──法律上は可能ですが、市場では大きく値引かれるのが現実です。共有減価の仕組みと、持分売却の前に検討すべき選択肢を不動産鑑定士が解説します。

著者:吉田 健人·読了 約3
共有持分だけを売ることはできるのか──持分売却の現実と「共有減価」

相続をきっかけに実家が兄弟の共有名義になり、話し合いも進まない。「せめて自分の持分だけでも売ってしまいたい」というご相談は珍しくありません。結論からいえば、自分の共有持分(不動産を複数人で所有しているときの各人の権利割合)を単独で売却すること自体は、法律上可能です。他の共有者の同意は要りません。問題は、その持分が市場でいくらで売れるかです。

持分だけ買っても、自由に使えない

不動産全体なら、買った人は住むことも貸すことも建て替えることもできます。ところが持分だけを買った人は、他の共有者との合意なしには不動産を自由に使えません。売却も建て替えも単独では決められず、手に入るのは「話し合いの当事者になる地位」に近いものです。

このため、一般の買い手が共有持分だけを買うことはまずなく、買い手は持分の買取を専門とする業者などに限られます。

共有減価──持分は「按分価格」では売れない

そこで生じるのが共有減価(共有持分が、不動産全体の価格×持分割合を下回って取引される現象)です。想定されるケースとして、全体で4,000万円の実家の2分の1持分は、計算上は2,000万円ですが、持分のままの売却では大幅に低い価格しかつかないことが一般的です。買い手側からみれば、取得後に他の共有者との交渉や共有解消の手続を抱え込むため、そのコストとリスクの分だけ安くしか買えないのです。

減価の程度は、不動産の種類や共有者の状況によって大きく異なります。持分の売却を検討する場合は、「全体の時価」と「持分としての価値」の両方を把握してから判断することをおすすめします。

売る前に検討したい選択肢

持分売却は、他の共有者に事前の相談なく第三者が共有関係に入ってくることを意味するため、親族関係に与える影響も小さくありません。その前に、他の共有者への持分の売却(買い取ってもらう)、全員での一括売却、共有物分割請求(裁判所を通じて共有を解消する手続)といった選択肢があります。法的な手続の進め方は弁護士にご相談ください。

いずれの道でも、交渉や手続の土台になるのは「この不動産はいくらか」という評価です。共有のリスク全般は共有のリスクで解説しています。

まとめ

  • 共有持分だけの売却は法律上可能だが、買い手は限られる
  • 共有減価により、持分は「全体価格×持分割合」を大きく下回るのが現実
  • 売却の前に、共有者間での買取りや一括売却などの選択肢を比較する価値がある

持分の価値や全体の時価の評価は、当事務所にご相談いただけます。お問い合わせからお気軽にどうぞ。

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

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