評価の実務

農地・山林を相続したら──宅地とは違う「評価の考え方」を知る

実家の相続に田畑や山林が含まれていた──宅地と同じ感覚で価格を考えると、大きく見誤ります。農地法の制約、市場の薄さ、転用の可能性という3つの視点から、農地・山林の評価の考え方を不動産鑑定士が解説します。

著者:吉田 健人·読了 約4
農地・山林を相続したら──宅地とは違う「評価の考え方」を知る

実家の相続を整理していたら、宅地のほかに田・畑・山林が出てきた——地方に実家のある方の相続では、ごく普通の光景です。ところが農地や山林は、宅地と同じ感覚で「路線価で概算」「近所の売買事例と比較」とやると、価格を大きく見誤ります。宅地とどこが違うのか、評価の考え方を整理します。

違い1──農地は自由に売買・転用できない

農地には農地法という法律の制約があります。農地を農地のまま売買するには原則として農業委員会の許可が必要で、買える人も実質的に限られます。また、農地を宅地などに変える転用にも許可(市街化区域では届出)が必要です。

つまり農地は、「誰にでも売れる資産」ではありません。この流通の制約こそが、宅地との価格差の根本にあります。なお、許可・届出の手続そのものは行政書士の職域ですので、転用をお考えの場合は行政書士にご相談ください。

違い2──「農地としての価格」と「宅地になり得る価格」は桁が違う

同じ1枚の畑でも、純粋な農村地帯にあるのか、市街地に隣接し宅地への転用が現実的なのかで、価格の水準はまったく異なります。純粋な農地としての価格は宅地に比べて低く、一方、転用の可能性が高い農地は宅地価格に近づいていきます(造成費などの負担は差し引かれます)。

私たち鑑定士は、その農地の位置・周辺の市街化の状況・法的な転用の可否を確認し、「農地のままの価値」と「転用を見込んだ価値」のどちらの市場で価格が形成される土地なのかを見極めたうえで評価します。相続税評価にも純農地から市街地農地までの区分がありますが、税務上の評価と取扱いは税理士にご確認ください。

違い3──山林は「売れるかどうか」自体が論点になる

山林は、農地以上に市場が薄い資産です。立木の価値が伐採・搬出のコストに見合わないことも多く、買い手を見つけること自体が難しい地域も少なくありません。一方で、別荘地に近い山林や太陽光発電の適地など、例外的に需要のある山林もあります。

遺産分割の場面では、「評価額がいくらか」だけでなく、引き取り手のない山林を誰が取得するかが実質的な争点になりがちです。管理の負担や固定資産税も含めて、マイナス面も率直に評価に織り込んで話し合うことが、後の紛争を防ぎます。

遺産分割では「実態に即した時価」で

農地・山林を固定資産税評価額や相続税評価だけで分けると、転用可能性のある農地を安く取得できた相続人と、処分に窮する山林を押し付けられた相続人の間で、実質的な不公平が生じ得ます。宅地・農地・山林が混在する遺産こそ、実態に即した時価の把握が話し合いの土台になります。土地の評価全般は土地の評価もご参照ください。

まとめ

  • 農地は農地法の制約で流通が限られ、宅地と同じ感覚では価格を見誤る
  • 転用可能性の有無で農地の価格水準は大きく変わる。転用手続は行政書士へ、税務は税理士へ
  • 山林は市場の薄さと管理負担まで含めて評価し、分け方を考える

農地・山林を含む遺産の評価は、お問い合わせからご相談ください。

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

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