評価の実務

タワーマンションの相続──2024年の相続税評価見直しと「時価」の考え方

タワーマンションは相続税評価と市場価格の乖離が特に大きい資産でした。2024年1月から新しい算定ルールが導入されましたが、遺産分割で使うべき時価とは依然として別物です。評価の考え方を不動産鑑定士が整理します。

著者:吉田 健人·読了 約4
タワーマンションの相続──2024年の相続税評価見直しと「時価」の考え方

タワーマンションは、相続の場面で価格の議論が最も割れやすい資産の一つです。市場価格の変動が大きく、同じマンション内でも階数や眺望で価格が大きく違い、そして長らく、相続税評価と市場価格の乖離が極端に大きい資産でした。2024年にはこの乖離を是正する新しい評価ルールも始まっています。相続でタワーマンションに向き合うときの、価格の基本を整理します。

なぜ乖離が大きかったのか

マンションの相続税評価は、土地の持分の評価と建物の固定資産税評価額をもとに計算されます。タワーマンションは1棟の敷地を数百戸で分け合うため一戸あたりの土地の持分がごく小さく、また建物の評価は階数や眺望による市場価格の差をほとんど反映しません。その結果、高層階の住戸ほど「市場では高いのに評価は低い」という乖離が拡大する構造がありました。

2024年1月からの新しい算定ルール

この乖離を踏まえ、2024年1月1日以後の相続・贈与から、分譲マンションの相続税評価に新しい算定ルールが導入されました。築年数・階数・敷地持分の狭さなどから市場価格との乖離の程度(評価乖離率)を推計し、乖離が大きい物件は評価額を補正する仕組みで、従来評価が市場価格理論値の6割に満たない場合に6割水準まで引き上げる考え方が採られています。

ただし、これはあくまで一般論としての制度の概要です。個別の物件への適用や具体的な評価額の計算は税理士の職域ですので、税務上の取扱いは税理士にご確認ください。

見直し後も「相続税評価=時価」ではない

ここで強調したいのは、新ルールで補正された評価額も、市場価格の6割水準を目安にした課税用の数字であり、時価そのものではないという点です。相続人間の遺産分割は時価で分けるのが原則ですから、相続税申告の数字をそのまま代償金の計算に使えば、乖離の分だけ配分が歪みます。

想定されるケースとして、市場で1億2,000万円程度と見込まれる高層階住戸の相続税評価が7,000万円程度であれば、どちらを基準にするかで代償金は2,500万円変わります(法定相続分2分の1の場合。説明のための仮の数値です)。桁の大きいタワーマンションでは、評価の基準の選び方の影響も桁違いに大きくなります。乖離が大きくなりやすい不動産の特徴は路線価と実勢価格の乖離でも解説しています。

タワーマンションの時価評価で見るべきこと

私たち鑑定士がタワーマンションを評価する際は、同じマンション・競合マンションの取引事例を基礎に、階数・方位・眺望・角部屋か否かといった住戸ごとの個別要因と、市場の局面を反映して時価を判定します。マンション評価の基本はマンションの評価をご覧ください。なお、当事務所はタワーマンション等の評価を扱う姉妹サイト(luxury.kre-appraisal.com)も運営しています。

まとめ

  • タワーマンションは相続税評価と市場価格の乖離が大きく、2024年1月から補正ルールが導入された
  • 補正後の評価額も課税用の数字であり、遺産分割で使うべき時価とは別物
  • 住戸ごとの個別性が大きいため、分割の基準には住戸単位の時価把握が有効

タワーマンションを含む遺産分割の評価は、お問い合わせからご相談ください。

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

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