不動産鑑定士とは何をする人か──相続の場面での専門家の使い分け

相続で初めて「不動産鑑定士」という職業を知る方は少なくありません。弁護士・税理士・司法書士・仲介会社と何が違い、遺産分割のどの場面で登場するのか。専門家の役割分担を整理します。

著者:吉田 健人·読了 約3
不動産鑑定士とは何をする人か──相続の場面での専門家の使い分け

「実家の価格でもめているなら、不動産鑑定士に相談してみては」と弁護士や税理士から言われて、初めてこの職業を知った——という方は少なくありません。相続の場面には多くの専門家が登場します。誰に何を頼めるのかを最初に整理しておくと、遠回りを避けられます。

不動産鑑定士とは

不動産鑑定士は、不動産の経済価値を判定する国家資格者です。「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づく資格で、不動産の適正な価格を判定して鑑定評価書を発行できるのは不動産鑑定士だけです。

国や自治体の地価公示・地価調査、裁判所の競売評価、相続や企業会計のための時価評価など、「価格の公的な判定」が求められる場面で働いています。相続との関わりでいえば、遺産分割における不動産の時価を、利害関係のない第三者として判定する役割です。

相続の場面での専門家の使い分け

弁護士:遺産分割協議・調停・審判の代理、寄与分や特別受益といった法律上の主張の組み立て。相続人どうしの対立が深い場合の総合窓口です。

税理士:相続税の申告と税務判断。相続税路線価(国税庁が課税のために定める道路ごとの価格)に基づく税務上の評価はこちらの領域です。

司法書士:相続登記(不動産の名義変更)の手続。

仲介会社:不動産を実際に売却する際の販売活動。無料査定は売却前提の営業活動として位置づけられます。

不動産鑑定士:不動産の価格の判定。遺産分割では「実家はいくらか」という争点の部分を担当します。弁護士が法律の主張を組み立てるのに対し、その前提となる価格の根拠を作る役割です。

それぞれの職域は法律で区切られており、鑑定士は法律相談や税務相談を受けられません。「誰に頼むか」を間違えると、答えられない相手に相談し続けることになります。

鑑定士に頼めること・頼めないこと

頼めること:遺産分割のための不動産の時価の鑑定評価、話し合いの初期段階で使う価格等調査報告書、他の相続人が出してきた評価資料の検証(セカンドオピニオン)、過去時点の価格の評価。

頼めないこと:分割割合や遺留分の主張(弁護士へ)、相続税額の計算(税理士へ)、相続登記の手続(司法書士へ)。当事務所でも、職域外のご相談には適切な専門家への相談をおすすめしています。

まとめ

  • 不動産鑑定士は「価格の判定」の国家資格者。鑑定評価書を発行できる唯一の職業
  • 弁護士=法律、税理士=税、司法書士=登記、鑑定士=価格、と役割が分かれる
  • 遺産分割では、価格の争点を鑑定士が引き受けることで、話し合いの土台が整う

「これは鑑定士に聞く話なのか分からない」という段階のご質問も歓迎します。職域外のご相談には、どの専門家に聞くべきかを含めてお答えします。

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

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